ジェイテクトSTINGS VS FC東京

西田がスパイクでチーム最多の13得点。サーブで攻めてブロックで仕留める、ジェイテクトSTINGSの新しい戦い方で勝ち切った

 表情がいい。強い男たちの顔だ。今シーズンにかける気持ちが伝わってくる。
 2019-20 V.LEAGUEが開幕した。初戦の相手はFC東京。午後3時30分、たくさんのファンで埋まった武田テバオーシャンアリーナで熱戦の火蓋が切られた。

 新たな顔ぶれが第1セットのコートに立った。セッターはルーキーの小林。対角にはワールドカップ2019で大車輪の活躍を見せた西田が入った。アウトサイドは浅野と2年ぶりにチームに帰ってきたカジースキ。いずれも新加入の饒と伏見が対角を組んだ。リベロは、フランスのパリバレーを2部優勝に導いた本間だ。2メートルを超える選手を3人もそろえ、圧倒的な高さを感じさせる。
 立ち上がりからジェイテクトSTINGSが主導権を握った。西田のスパイクで先制すると、伏見が決めてブレイク。さらに西田の巧みなスパイクでサイドアウトを切り、FC東京にプレッシャーをかけていく。セッターの小林も絶妙なトス回しで相手を翻弄。饒が決めて8−6で1回目のテクニカルタイムアウトを奪った。
 ここからがジェイテクトSTINGSの真骨頂だ。饒がサーブで攻めて、カジースキがブロック。サーブで相手のミスを誘って、伏見がダイレクトスパイクを叩き込んだ。西田がフェイントで加点。伏見のブロックもあり、13−6とリード。FC東京に早くも2度のタイムアウトを使わせた。
 2回目のテクニカルタイムアウトが開けると、伏見のサービスエースでブレイクポイントを奪った。小林もジャンプサーブでエースを獲得。伏見が決めてセットポイントとすると、金丸をリリーフに送り込む。最後は西田が決めて、ジェイテクトSTINGSが25−16と圧倒した。

 ジェイテクトSTINGSの勢いは第2セットに入っても止まらない。とりわけ有効だったのがサーブだ。相手のサーブレシーブを崩し、高さのあるブロックで仕留める。第2セットの前半はカジースキがサーブで攻めた。5−5の場面でサービスエースを決めて6−5。西田のスパイクでラリーを制して3連続得点を奪った。
 浅野も要所でスパイクを決めた。10−9から伏見のブロックなどで3連続得点。試合の主導権を完全に握った。
 攻撃の手を緩めない。伏見のスパイクはアウトと判定されたが、チャレンジによって得点が認められた。カジースキが難しい二段トスを決めて15−11。一時は4連続失点で16−16の同点に追いつかれるが、浅野が決めて嫌な流れを断ち切った。さらに浅野のサービスエースなどで4連続得点。ジェイテクトSTINGSが最後まで高い集中力を見せ、25−19と勝利に王手をかけた。

 饒のブロックで幕を開けた第3セット。さらに饒のサービスエースで序盤から走った。カジースキのスパイクなどで5−1。カジースキのバックアタックが決まり、4点のリードで1回目のテクニカルタイムアウトを奪った。
 さらに浅野が好レシーブでチームを勢いづける。会場のボルテージは最高潮に達した。12−7になったところで福山を投入。ベンチワークも功を奏した。その福山がスパイク、ブロックで活躍して16−9。さらに17−10の場面ではサービスエースも決めた。
 粘るFC東京に追い打ちをかけたのが西田だ。コートの外に出たボールを好レシーブでつないだ。これをカジースキが決めて19点目。リードは8点に広がっていた。中根、藤中をコートに送り込み、フレッシュな布陣で試合を締めくくりにかかった。全員が自分の役割に徹していた。
 西田のバックアタックでマッチポイント。最後はカジースキがサービスエースを決めた。25−16。開幕戦を最高の形で終えた。

 会心のスタートダッシュだ。記者会見で浅野が口火を切った。
「饒選手、伏見選手、カジースキ選手が加入して、ブロックが持ち味のチームに仕上がってきている。サーブは全体的に『攻める』というコンセプトで臨んでいます。最初はミスもあったが、第2、3セットはサーブが走り、ブロックで仕留めるという今のジェイテクトSTINGSの新しい形を作ることができた」
 ただの1勝ではない。ジェイテクトSTINGSがVリーグに新たな歴史を刻む、大きな大きな第一歩だ。

高橋慎治監督

ミスが出たり、硬さが出た部分もありましたが、ジェイテクトSTINGSのバレーが展開できたと思います。修正点をしっかり修正し、いいところを継続してこれからの試合につなげていきたい。今のチームには高さがあります。ジェイテクトSTINGSにこれだけの高さがあることは今までなかった。新鮮な気持ちだし、全員が自分の役割を果たしてくれていることを頼もしく思います。たくさんの方が会場に足を運んでくださって、素直に嬉しかったです。選手の頑張りに応えられるように、しっかりと采配をしていきます。

伏見大和

移籍して初めての試合ということで、終わってみてすごく緊張していたと感じています。自分の役割は何だろうと考え、いろいろなプレーをマルチにできる選手になることを目標にしてやってきました。その成果が出たと思うし、チームとしても全員が求められた役割に徹したことで今日の結果が出たと思います。ジェイテクトSTINGSは若い選手が多く、自分が入った段階で中堅よりも上になります。チームを引っ張っていかなければいけない責任感、スタッフから求められている期待を感じながら頑張っていきたいと思います。

西田有志

チームがいい状態をキープできたことが勝因だと思います。ワールドカップ2019を戦った日本代表のカラーに一番近いのは、サーブで相手を崩してブロックでワンタッチを奪い、トランジションを取るというところ。自分は合流したばかりですが、チームに求められているプレーができたことは自信になりました。今回のVリーグを通して、状況が悪い時のブロックアウトやリバウンドなど、バリエーションを増やすことを意識してやっています。どのチームが相手でも、質を高めながら自分をもっと追い込んでいきたいと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

小林の巧みなトスワークで多彩な攻撃を展開。穴のないチームに変わりつつある

この試合のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)を挙げるならセッターの小林だろう。ルーキーでありながら開幕戦のスタメンに抜擢され、西田やカジースキら個性豊かなアタッカー陣を巧みに操った。アタッカーの打数を見ても、小林がいかにトスを散らしたかがよくわかる。最も多いのは西田で「20」、続いてカジースキが「14」だ。3番目に多いのがミドルブロッカーの伏見で「13」。浅野と饒がそれぞれ「8」である。高橋監督が言う。「セッターには、真ん中のクイックとパイプを使っていこうと話しています。それから、どこかに偏ったトス回しは避けること。今日の小林選手はいい具合にトスを分散できていました。こういうトス回しをしていけば、相手のブロッカーも困ると思います」。どこからでも攻撃ができるチームは強い。ジェイテクトSTINGSは今シーズン、穴のないチームへと変貌を遂げようとしている。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS FC東京
第1セット 25 - 16
第2セット 25 - 19
第3セット 25 - 16
第4セット
第5セット
日付 2019年10月26日(土)
試合 V1リーグ レギュラーラウンド 第1戦
場所 武田テバオーシャンアリーナ
メンバー 伏見、饒、カジースキ、小林、西田、浅野 L本間
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