ジェイテクトSTINGS VS サントリーサンバーズ

第2セットから反撃開始。西田、カジースキのサーブが走り、相手の守備を崩す。中根のトスワークも冴え、多彩な攻撃が機能した

 いよいよセミファイナルを迎えた。舞台はエフピコアリーナふくやま。相手は、堺、JT広島を破ってレギュラーラウンド4位から勝ち上がってきたサントリーサンバーズだ。レギュラーラウンドは2勝1敗で勝ち越しているが、3レグはストレートで敗れている。アドバンテージはないと言っていいだろう。

 タフな一戦になることはわかっていた。第1セットは伏見が決めて先制、カジースのスパイクでサイドアウトを切り、西田が1本目のサーブでいきなりエースを奪った。しかし、3−2から4連続失点。サントリーのムセルスキーにノータッチエースを決められるなど、3−6とリードを許す。ここで高橋監督は1回目のタイムアウトを要求。西田のバックアタック、饒の速攻で立て直したものの、2点のビハインドで1回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 レセプションの乱れはあったが、序盤の内容は互角だったと言っていい。セッターの中根も積極的にトスを散らした。西田はフェイントを織り交ぜながら、相手の3枚ブロックをかいくぐる。リベロの本間を軸に、フロアディフェンスでも本領を発揮。粘り強くラリーを制し、11−11の同点に追いついた。
 しかし、ムセルスキーのサーブに苦しんで13−16。藤中が嫌な流れを断ち切ったが、中盤に開いた点差はあまりに大きかった。終盤はサイドアウトの応酬。中根は西田、カジースキの両エースにトスを集めたが、連続得点が奪えず第1セットを19−25で失った。

「第1セットはカバーできるボールがカバーできていなかった。イージーミスさえ修正すれば、自分たちの展開に持ち込めると思った」
 試合後にこう振り返った本間。その言葉通り、第2セットからジェイテクトSTINGSが本領を発揮する。カジースキがトップフォームを取り戻した。相手のブロックにスパイクを当てて、うまくボールをはじき出す。西田も技ありのスパイクで得点を加算。饒の速攻でラリーを制し、ブレイクポイントを奪った。西田のこの日2本目のサービスエースで、4−2とリードを広げた。
 その後は互いに1点ずつ取り合う展開。ジェイテクトSTINGSは、カジースキのバックアタック、藤中のスパイクなどで確実にサイドアウトを奪う。3連続失点で一時は逆転を許したものの、西田、カジースキが続けて決めて11−10と再びリード。伏見がBクイックを決めると、16−13で2回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 攻撃陣を牽引したのは、紛れもなく西田だ。カジースキも安定したパフォーマンスを見せた。17−15の場面では難しいボールをうまく決めてチームに勢いをもたらしている。拮抗した展開が続いた。ジェイテクトSTINGSはリリーフサーバーに久保山を投入して変化を加えた。
 饒の速攻でサイドアウトを切ると、金丸をコートに送り込んでネット際に高さを加えた。ここは1本で切られたが、西田にトスを集めて着実に加点。会場が大歓声に包まれる。西田のスパイクでセットポイント。最後はカジースキが強烈なスパイクをたたき込み、ジェイテクトSTINGSが25−22でタイスコアに戻した。

 続く第3セットもジェイテクトSTINGSが走った。仕掛けたのがカジースキだ。4−4から2本連続でサービスエース。サントリーに傾きかけた流れを取り戻した。
 序盤は相手のミスもあり、3点をリードした。さらに西田、伏見が決めて相手の守備に揺さぶりをかける。この日は藤中が最も多い35本のサーブレシーブを受けた。61.4パーセントの成功率で、カジースキにかかる負担を軽減した。サービスエースを決められて1点差に詰め寄られたが、西田のスパイクが暗くなりかけたムードを払拭した。この13点目が大きかった。
 カジースキがサーブで攻めると、西田がバックアタックを決めてブレイク。15−13から2回目のテクニカルタイムアウトを挟んで3連続得点を奪った。ブロックで相手にプレッシャーをかけ、饒も高い決定率を残した。カジースキが上げた二段トスを西田が豪快に決めて18−13。1点を返されたが、そこからさらに3連続得点を奪う。西田のフェイントでラリーを制し、ジェイテクトSTINGSが勢いをつかんだ。
 伏見のブロックで23−17。ここでリリーフサーバーの久保山を投入。相手のミスを誘った。セットポイントを奪うと、藤中の好レシーブでつないだボールを西田が決めて25−17。ジェイテクトSTINGSが2セットを連取し、勝利に王手をかけた。

 勝利まで、ファイナルまであと1セット。しかし、第4セットの立ち上がりはサントリーに主導権を握られる。はっきりしているミスは修正すればいい。タイムアウトで早めに手を打った。
 相手のミスで1点を返した。サービスエースを取られたが、すぐにカジースキがスパイクで取り返した。ムセルスキーとカジースキのマッチアップは見応え十分だった。カジースキがサーブで攻め、2点差まで詰め寄った。要所で饒が速攻を決めた。
 我慢の時間が続いた。エフピコアリーナふくやまに詰めかけた大応援団が、チームの背中を押す。細かいミスもあったが、ジェイテクトSTINGSの集中力が途切れることはなかった。サントリーのムセルスキーもギアを上げてくる。しかし、カジースキがブロックで相手の勢いを止めた。
 11−14の場面では、西田が強烈なサーブで相手を吹き飛ばした。3点のビハインドで2回目のテクニカルタイムアウトを迎えたが、本来のバレーを展開するジェイテクトSTINGSがペースを取り戻しはじめていた。
 カジースキの二段トスを西田が打ち切って15−17と2点差。伏見のスパイクなどで僅差を維持したまま試合を進めていく。西田が二段トスを決めて19−21。相手のミスで20−21と、その差が1点に縮まった。
 ここからドラマがはじまった。西田が2本連続でサービスエース。気持ちのこもったボールが、相手コートに襲いかかった。22−21。点の取り合いになった。連続失点を喫したが、高橋監督はタイムアウトを要求。ムセルスキーのサーブをここで切った。23−23。金丸がコートに入った。
 ムセルスキーのスパイクを本間が上げ、西田が決めてマッチポイントを奪った。ここから24−25とリードを許すものの、饒がサーブをエンドラインいっぱいに決めて26−25。痺れるような展開が続いた。
 西田が決めて27−27。相手のスパイクがミスになって、ジェイテクトSTINGSが3度目のマッチポイント。最後は藤中、伏見の厚い壁がムセルスキーのスパイクをシャットアウト。29−27とし、ジェイテクトSTINGSがセットカウント3−1で勝利を決めた。

 熱戦を制し、初のファイナル進出を決めた。3レグのリベンジを果たしたという意味でも、この勝利が持つ意味はとてつもなく大きい。
「これまでのチームの最高成績が3位ということもあり、この一戦を超えるか超えないかがとても大きかった。試合間が空いたこともあって、第1セットは難しかった。泣いても笑っても、リーグ戦はあと1試合。自分たちの力を出し尽くすだけです」
 試合後の記者会見でキャプテンの本間はこう語った。頂点まであと一つ。2月29日。決戦の地は群馬県の高崎アリーナだ。まだ見ぬ景色を求めて、ジェイテクトSTINGSの歩みが止まることはない。

高橋慎治監督

サントリーさんのレベルが高く、セミファイナルにふさわしい試合になりました。難しい状況の中でもしっかりと勝ち切ったことは、チームにとって大きな成長につながると思います。藤中選手や鶴田選手のようにレセプションがうまい選手が多いサントリーさんに対し、サーブの対策をしっかり立ててそれを選手たちが実行してくれました。第1セットは取られましたが、1点に対する執着心を全員が意思統一し、リスタートした結果が第2セットからのいい形につながったと思います。まずは自分たちのバレーができないと、いい展開に持ち込むことはできません。29日のファイナルで最高のパフォーマンスを発揮できるように、しっかりと準備をして臨みたいと思います。

カジースキ マテイ

ファイナルに進むことができてとてもうれしいです。特に最近のサントリーさんはプレーのレベルがとても上がっており、試合の入り方に苦しみながらも勝てたことはチームにとって大きなプラスになりました。普段からいい練習ができており、難しい場面でも選手同士でサポートし合うことができています。試合になっても、いい雰囲気でプレーできています。ファイナルに向けて、まずは疲労を回復することが重要です。私たちは今週も試合をしているので、パナソニックさんよりも優位な状況にあると言えるでしょう。もちろん強いチームではありますが、自信を持ってプレーすれば必ずいい結果につながります。ただし、目標にたどり着くためにはもっと努力しなければいけません。勝てたことはうれしいですが、すぐに切り替えてファイナルに向けて準備したいと思います。

藤中優斗

どうしても来週(のファイナル)にチーム全員で行きたかったので、内容は決してよくなかったけど、とにかく勝ててよかったです。昨日の夜から緊張していて、今日もずっと緊張していました。序盤はうまくいかないプレーもあったけど、本間さんが声をかけてサポートしてくれたおかげで、途中から開き直ることができました。第1セットを取られたけど、すぐに切り替えて、いい雰囲気でプレーすることができました。今シーズンは、2レグから試合に出させてもらい、先輩方がやりやすい雰囲気を作ってくれて、徐々にうまくできるようになりました。まだまだ課題があるので、チーム全員で詰めていって、土曜日をリーグ戦の集大成にしたい。技術どうこうよりも、重要なのはメンタルです。自分たちはあくまでも挑戦者。自分の、チームのすべての力を出し切るつもりで、目の前の1点、1セットをしっかり取りにいきます。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

西田がサーブで5得点。勝敗を左右するサーブに、さらに磨きをかけたい

明暗を分けたのは、ジェイテクトSTINGSのストロングポイントでもあるサーブだ。特にこの試合は、大事な場面でよく走った。第3セットの前半は、カジースキの連続エースで流れを取り戻した。第4セットの終盤は、西田のサービスエースで逆転に成功。ジュースにもつれ込んだ25−25の場面では、饒がエンドラインいっぱいに決めている。藤中も変化を加えながら効果的なサーブを放っていた。「今日はサーブが走りました。特に大事な場面で、点差を広げるサーブを決めることができた。もちろん、サーブはこのチームにとって一つの武器ですが、それが今日の試合では何度もチームを助けてくれました」。試合後にこう振り返ったのはカジースキだ。ファイナルでも、サーブは勝敗を左右する重要なプレーになるだろう。しっかり準備をして、高崎アリーナに乗り込みたい。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS サントリーサンバーズ
第1セット 19 - 25
第2セット 25 - 22
第3セット 25 - 17
第4セット 29 - 27
第5セット
日付 2020年2月24日(月)
試合 Vリーグ セミファイナル(3位決定戦)
場所 エフピコアリーナふくやま(福山市総合体育館)
メンバー 藤中、伏見、饒、カジースキ、西田、中根 L本間
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