ジェイテクトSTINGS VS JTサンダーズ広島

久保山のトスワークが冴え、前半はセンター線とバックアタックが機能。勝負どころで西田にトスを集め、接戦をものにした

 会心の勝利だった。チームに気迫が満ち溢れていた。コートに立った7人だけではない。控えメンバー、スタッフ、全員の思いが一つになった。天皇杯の準決勝でJTサンダーズ広島にストレート勝ち。7年ぶりのファイナル進出を決め、満面の笑みがこぼれた。

 前半のチームを引っ張ったのはフェリペだ。完全にスイッチが入った。立ち上がりから声でチームを鼓舞。2−3と先行されたが、強烈なスパイクですぐに追いついた。ここから3点のリードを許すが、久保山、藤中が立て続けにブロック。さらに2点を追加し、8−7で1回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 久保山と西田のコンビが噛み合わないところはあったが、中盤以降も順当に得点を積み重ねていく。要所で福山が立て続けにブロック。ラリーの中からクイックを決めるなど、コンディションは抜群だった。12−9となったところでJT広島は1回目のタイムアウト。フェリペのエンジンもかかりはじめた。
 フェリペが鋭角にスパイクをたたき込んで14−11。久保山がブロック。フェリペがサイドラインいっぱいにサービスエースを決めて、4点のリードで2回目のテクニカルタイムアウトを折り返す。
 本間の正確なサーブレシーブから饒がクイックを決めた。フェリペのパイプ攻撃も機能。終盤はサイドアウトの応酬となったが、セッターの久保山はサイドにトスを散らして得点を重ねていく。序盤でクイックを多用したことが功を奏した。
 ブロックでプレッシャーをかけ、相手のミスを誘ってブレイク。饒のクイックでセットポイントを奪った。福山がクイックを決めてフィニッシュ。ジェイテクトSTINGSが25−21で第1セットを先取した。

 第2セットは福山のブロックで幕を開けた。序盤は西田にトスが集まった。ライトからストレートに決め、ハイセットを奥に打ち抜いた。本間のトスも鮮やかに決めた。さらに饒のブロックで勢いをつかむ。1回目のテクニカルタイムアウトは8−5。ルーズボールを西田がレフトに上げ、それを藤中がたたき込んだ。
 本間が広告ボードに突っ込みながらボールをつないだ。これでチームの士気が上がった。福山のクイックをきっかけに4連続得点。フェリペのブロック、藤中のサービスエースでリズムをつかんだ。
 完全に主導権を握った。福山がクイックのモーションからフェイントをポトリと落とした。さらに福山のサーブで相手を崩すと、ネット際に上がったボールをフェリペがダイレクトでたたき込んだ。饒のクイックでラリーを制した。フェリペが決め、7点のリードで2回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 その後もジェイテクトSTINGSのペースで試合が進行した。フェリペが決めて、先に20点に乗せた。西田が決めてブレイク。久保山がワンハンドで上げたトスを饒が決めて23点目。饒が吠えた。金丸を投入して高さを生み出した。最後は相手のサーブがミスになり、25−18で2セットを連取した。

 第3セットは、序盤で先行しながらも我慢の時間が続いた。西田、フェリペにトスを託し、要所で福山、饒がクイックを決める。センター線にバックアタックを絡めながら、一つひとつ得点を積み上げていった。西田がネット際で競り勝って8−5。久保山のトスワークが抜群に冴えていた。
 中盤は徐々に点差を詰められた。しかし、ジェイテクトSTINGSは集中力を切らさない。饒のブロックなどでしのいだが、12−11と1点差に迫られた。さらに西田がアタックラインを踏んで13−13。ここで髙橋監督はタイムアウトを要求した。
 西田の集中力が最高潮に達した。セッターの久保山も積極的に西田にトスを上げた。JTのエドガーとの激しい打ち合いになった。一時は16−17と逆転を許した。しかし、下を向く者は一人もいない。本間がアンダーで上げたトスを、西田がうまく落とした。
 明暗を分けたのは、西田のスパイクが止められて19−20となってからだ。饒のクイックでサイドアウトを切った。ワンポイントで金丸を投入。福山が上げたトスを西田が決めてブレイク。さらにフェリペからのハイセットに合わせて、ブロックアウトを取った。
 これで優位に立った。同点に追いつかれるが、西田のスパイクで確実にサイドアウトを切っていく。25−24。最後はフェリペが決めてこのセットを奪い、ストレート勝ちを決めた。

 非の打ちどころがない勝利だった。準々決勝までの不安を払拭した。ジェイテクトSTINGSは強い。そう感じさせる内容だった。
「全員で共有していることですが、天皇杯は頂点しか狙っていません。今シーズンは、Vリーグと天皇杯の優勝を目標にしています。まずはその挑戦権を得られたことを嬉しく思うし、それを達成しようとしてくれている選手たちを誇りに思います」
 試合後にこう話した髙橋監督。男子決勝は20日16時。相手はパナソニックに決まった。チーム一丸となって戦い、日本のバレー界に新たな歴史を刻みたい。

髙橋慎治監督

申し分のない試合でした。昨日、一昨日となかなか自分たちのバレーが出せない中で今日を迎えましたが、この試合にかける思いを選手たちがすべて出し切ってくれたと思います。昨日の試合後、選手から「もっとアグレッシブに戦おう」という言葉があり、全員でそれを再認識しました。第3セットはリードしながらも追いつかれ、いつもだったらそのまま引き離される展開だったかもしれません。しかし、今日は我慢して、我慢して、我慢し切って最後に抜け出せた。それがストレートで勝ち切った要因だと思います。天皇杯の目標はもちろん優勝です。まずは来週の決勝戦に集中し、今持っているすべての力を注ぎ込みます。

久保山尚

久しぶりにスタメンで出て、こうして3−0で勝てたことは自分にとって大きな自信になりました。出だしは西田選手とのコンビが合っていない部分もあったし、西田選手も力んでいる部分がありました。そこを修正することと、センター線とパイプ攻撃はうまく使えていたので、そこは継続していきたいと思います。第3セットは少しコンビが合わない場面もありましたが、慌てずに一つずつ切れたので、そこはよかったと思います。個人的な課題は、センター線とパイプ攻撃の決定率が低く、使用頻度が少ないこと。そこにトライした結果が今日の勝利につながりました。決勝戦は相手がどこであれ、自分たちのバレーができれば勝てます。1週間あるので、課題を修正し、いい部分を伸ばしていきたいと思います。

西田有志

中盤から終盤にかけての勢いが、リーグ戦を含めて今シーズンで一番よかったと思います。チームの力を見せられたし、自分たちはもっとやれるというところをしっかり示すことができた。今日はチームとしても自分としても、手応えのある試合になりました。とにかく勝つことしか考えていなかったし、その中で何が必要かというと、点を取ることだったり、チームにどう流れを持ってくるかということ。そう考えると、失点しても次のプレーでしっかり取り返せました。吹っ切れた状態でプレーできたし、メリハリもしっかりつけられました。来週の決勝戦に向けて、コンディションを気にしながら取り組んでいきたいと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

コートから声が溢れていた。フェリペもフィットし、チーム一丸に!

間違いなく今シーズンのベストゲームと言えるだろう。コートの中から声が途絶えることがなかった。プレーの指示だけではない。いいプレーには互いを称え合い、ミスには「次だ。切り替えろ」と励まし合った。気を吐いたのがフェリペだ。時には鬼気迫る表情を見せ、チームを鼓舞。自分がスパイクを決めても、トスを上げたセッターやボールをつないだレシーバーに真っ先に駆け寄った。「あれだけの実力と経験を持っている選手なので、この大事な試合に向けてしっかり準備してきたのでしょう。それが今日の結果に表れたのだと思います」と髙橋監督も最大限の賛辞。チームは確実に一つになった。この勢いで来週の決勝戦に臨み、今シーズン1つ目のタイトルを奪いたい。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS JTサンダーズ広島
第1セット 25 - 21
第2セット 25 - 18
第3セット 26 - 24
第4セット
第5セット
日付 2020年12月13日(日)
試合 令和2年度 天皇杯 準決勝
場所 武蔵野の森総合スポーツプラザ
メンバー 藤中、福山、饒、フェリペ、西田、久保山 L本間
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