ジェイテクトSTINGS VS パナソニックパンサーズ

前半はセッターの久保山が巧みにトスを散らして多彩な攻撃を展開。全員で得点を重ねると、後半は西田がスパイク、サーブ、ブロックと大車輪の活躍を見せた

 相手のサーブがネットにかかった瞬間、全員が両手の拳を突き上げた。パナソニックパンサーズとの天皇杯ファイナル。チームを日本一に導いたのは、16人のメンバーと彼らを支えるスタッフ陣の努力の賜物に他ならなかった。

 慎重な入り方だった。最初のサーブは福山。いきなりネットインでサービスエースを奪う。フェリペが強打を決めてラリーを制した。藤中がレフトからクロスに決めると、フェリペの好レシーブから再び藤中のスパイクでブレイク。相手のミスもあり、3連続得点を奪った。さらに西田のスパイクで8−6。多彩な攻撃を見せたジェイテクトSTINGSが立ち上がりの主導権を握った。
 西田が止められて、一時は9−10と逆転を許した。しかし、セッターの久保山は冷静だった。崩れたボールをアンダーで高めにトスを上げ、それをフェリペが決めてサイドアウトを切る。そこから西田が連続でサービスエース。13−11とリードを2点に広げた。
 西田が高い打点からスパイクを放ち、要所でフェリペのパイプ攻撃も機能した。リベロの本間を軸にサーブレシーブも安定。福山のブロックで18−14とすると、パナソニックが1回目のタイムアウトを要求した。
 福山のBクイックも面白いように決まった。久保山のトスもさることながら、ブロックの間を抜く福山のテクニックも見事だった。本間が難しいボールを正確に上げ、それを西田が強烈にたたき込んだ。一時は1点差まで詰め寄られるが、髙橋監督はタイムアウトを要求。嫌な流れを切った。
 最後はジェイテクトSTINGSが4連続得点。フェリペのノータッチエースに続いて、饒がネット際で競り勝ってセットポイントを奪った。金丸をワンポイントで投入すると、フェリペが上げたボールを饒が2本目で返してフィニッシュ。ジェイテクトSTINGSが、25−20で先取した。

 第2セットは奪われたが、内容は悪くなかった。西田に頼り過ぎることなく、センター線をうまく使って攻撃を組み立てた。久保山のトスに迷いがなかった。引き離されそうになっても、粘り強く食らいついた。
 いくつかのサービスエースを決められたが、守備の崩れを証明するものではなかった。すぐに修正し、次のプレーにつなげた。チャンスボールも確実にものにして、チームのリズムを生み出した。
 勝負どころでは西田の左腕が爆発した。終盤も我慢強く試合を進め、西田のスパイクで23−23の同点に追いついている。そこに至るまでの過程――、福山、饒のクイックを生かした攻撃の組み立てもチームをうまく回した。
 23−25でこのセットを落としたが、下を向く者などチームに一人もいなかった。

 第3セットは西田が躍動した。先制点は福山。高い打点からクイックを決めた。西田がうまくブロックアウトを誘ってブレイク。パナソニックのクビアクのサーブを藤中がうまくさばき、フェリペの得点につなげた。西田がサーブで相手の守備を崩すと、自らバックアタックをたたき込む。6−6からテクニカルタイムアウトを挟んで3連続得点。福山のブロックに続いて、西田が相手コートの空いたスペースに巧みに落とした。さらにクビアクのスパイクも止めた。
 西田の独壇場が続く。ブロックが決まって12−8としたところでパナソニックはタイムアウト。1点を返されるが、西田は熱く、しかし冷静に得点を積み重ねていく。サーブも効果的だった。相手のサーブレシーブを崩し、バックアタックで加点した。
 久保山、福山、藤中がブロックでワンタッチを取り、地上戦でも優位に立った。西田もフェイントを織り交ぜて、相手の守備を翻弄。フェリペのバックアタック、福山のクイックも決まり、21−11と一方的な展開に持ち込んだ。
 フェリペのバックアタックで23点目。福山が決めてセットポイントを奪うと、相手の得点を13点に抑えたジェイテクトSTINGSが第3セットを制した。

 集中力が途切れなかった。第4セットは激しい点の取り合い。1−4と先行を許すが、西田の連続サービスエースなどで4連続得点を奪う。ボールのスピードはもとより、コースを変えるなど戦略もピタリとハマった。
 しかし、相手は試合巧者のパナソニック。大竹と西田による日本人オポジットの対決も見応えがあった。6−6から3連続失点を喫し、ビハインドが広がった。
 饒の2本のサービスエースで反撃の糸口をつかんだ。福山のブロックも決まった。本間がファインプレーを見せると、フェリペがアンダーで上げたルーズボールを、西田が中に切れ込みながらスパイクを放った。これで12−10と優位に立った。一時は逆転を許したが、西田がサーブで相手を崩し、ネットを越えてきたボールを饒がダイレクトでたたきつけた。16−15で2回目のテクニカルタイムアウトを迎えた。
 ここからの西田の活躍が凄まじかった。17−18から一人で3連続得点。一時、嫌な雰囲気が漂ったが、一気に流れを引き戻した。本間、フェリペが上げたトスも丁寧で、エースがその役割を果たした形だ。相手にサイドアウトを切られたが、西田が着実に得点を重ねていく。真後ろからきたハイセットを決め、超インナーをたたき込むなど、スキルの高さも見せつけた。
 福山が決めて23点目を奪うと、西田のスパイクでチャンピオンシップポイント。最後はクビアクのサーブがネットにかかってゲームセット。25−22。ジェイテクトSTINGSがセットカウントを3−1とし、初優勝を決めた。

 高崎で手にしたVリーグの優勝から10カ月、メンバーは替わったがより強いチームに変貌を遂げた。殊勲の西田が言う。
「ファンの皆さんが入った中で決勝戦を戦えたことに感謝しています。また、その中で優勝できたことを嬉しく思います。久しぶりに息が荒れる試合になりましたが、チーム全員で勝ち切れたことは自信につながります。まずは体を壊さないという当たり前のことをしっかりやって、安心してバレーボールを見られるように。そこからまた自分たちを強くしていけたらと思います」
 チームはまた一つ、新たな勲章を手に入れた。しかし、その歩みは止まらない。次の戦いは来年の1月10日、東レとの一戦だ。この結果に満足することなく、チャレンジ精神を持って邁進していきたい。

髙橋慎治監督

大変な状況の中で天皇杯を開催していただいたこと、そして、その中で試合をやらせていただいたことに感謝しています。また、多くの方に試合を見ていただき、優勝できたことを嬉しく思います。試合の内容としては、攻め続けないと勝てないと思っていました。その気持ちをずっと持ち続けてくれた選手たちを頼もしく感じます。これほどの大舞台でも、選手一人ひとりが落ち着いていました。見た目は熱くプレーしていましたが、頭の中では冷静に考えて、一つひとつのプレーをしっかりやってくれたと思います。この経験はすごく大きなものになるし、チームとしても成長につながるでしょう。これを来年の1月10日に再開するリーグ戦につなげられるよう、全力で取り組んでいきます。

本間隆太

このような状況の中で大会を無事に開催していただいたことに感謝しています。タフなゲームになるのは承知の上で今日の決勝戦に臨みましたが、予想以上に苦しい試合でした。その中でもエースの西田が引っ張ってくれて、福山も決定率が100パーセント。攻撃陣が非常に躍動できたと思います。ラリー中にいい守備もたくさんあったし、チームとしては2本目のつなぎがよかった。この天皇杯に入ってから、コンビネーションもよくなってきました。サーブレシーブの連携、ブロックとディグの関係も、リーグ戦より天皇杯の方がいいクオリティでできています。これを年明けから再開するリーグ戦につなげたいと思います。

福山汰一

大変な状況にも関わらず、大会を開催していただいたことに感謝しています。チームとして初優勝できたことを嬉しく思うとともに、この優勝をきっかけに年明けからはじまるリーグ戦に向けて頑張っていきたいと思います。準決勝あたりからセンターに上がるトスの配分が増え、今日はラリー中でも積極的に使ってくれました。そこで点数を取ればセッターの久保山さんも気持ち的に『いける』と思うので、トスが上がった以上はミスや被ブロックがないように意識しました。今日はAクイックもBクイックもあらゆる角度に打つことができ、ブロックの間を抜くこともできました。とてもよかったと思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

福山の決定率が100パーセント。西田に依存せず、全員の力で優勝をつかむ

先週のヴォレアス北海道との試合のあと、ベンチの前にできた円陣で西田が吠えた。「もっとアグレッシブに戦わないと、次の試合は勝てないぞ」。その光景は迫力に満ちていた。そして、翌日のJTサンダーズ広島戦は見違えるような試合を展開している。福山が言う。「確かにそれまでの試合は、リーグ戦とは違う気持ちがみんなにあったと思います。勝たないといけない。でも、いいプレーができなくて、少しずつ歯車が噛み合わなくなっていった。西田から『このままでは勝てない』という話もありましたが、全員が同じことを考えていたと思います。そこから個々が反省して、いい準備をすることができました。それがJT広島戦だったと思います」。気を吐いたのがフェリペだ。セッター久保山のトスワークにも変化があった。西田に依存することなく、センター線を積極的に使うようになった。決勝戦の福山の決定率は100パーセント。8本のスパイクを放ち8本とも決めている。髙橋監督も記者会見で選手を称えた。「パナソニックさんはどの大会も上位に進出しているチームで、誰もが認める強豪チームです。そのチームを相手に大舞台で勝てたことはジェイテクトSTINGSにとっての財産になるし、自信につながると思います」。会心の勝利だった。全員の力を合わせてつかんだ価値ある優勝だ。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS パナソニックパンサーズ
第1セット 25 - 20
第2セット 23 - 25
第3セット 25 - 13
第4セット 25 - 22
第5セット
日付 2020年12月20日(日)
試合 令和2年度 天皇杯 決勝
場所 大田区総合体育館
メンバー 藤中、福山、饒、フェリペ、西田、久保山 L本間
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