ジェイテクトSTINGS VS パナソニックパンサーズ

安定した守備から多彩な攻撃を展開。フェリペが本領を発揮し、久保山の巧みなトスワークで相手に的を絞らせなかった

 極めて重要な一戦だ。先週は大阪でサントリーに連敗した。果たしてチームは立ち直ることができたのか。本間が言う。
「火曜日に1時間半から2時間くらいみんなで話し合い、そこでみんなの本音をぶつけ合うことができました。チームとして進んでいくベクトルを共有できたことがよかったと思います」
 果たしてチームは、輝きを取り戻した。一つ一つのプレーに100パーセントの力を注ぎ、パナソニックパンサーズを相手に互角以上の戦いを見せた。

 立ち上がりから集中していた。ジェイテクトSTINGSの1点目は藤中。宮浦も安定したパフォーマンスを発揮した。リベロの本間、アウトサイドヒッターのフェリペ、藤中を軸に落ち着いたサーブレシーブを見せた。2点のビハインドで1回目のテクニカルタイムアウトを迎えたが、サイドアウトの内容は悪くなかった。
 その後も拮抗した展開が続く。セッターの久保山は調子のいいフェリペを積極的に使った。クイック、パイプ攻撃も機能。村山との連携が合わない部分がありつつも、久保山の巧みなトスワークでゲームを一進一退の展開に持ち込んだ。
 ファジャーニ監督の采配も光った。パナソニックのクビアクがサーブを打つ直線にタイムアウトを要求。さらに宮浦のサーブでリリーフサーバーの袴谷を投入するなど変化を加えた。「袴谷はパワフルなジャンプサーブを持っている。相手を崩して、サーブレシーブをネットから離すようにという意図で入れました」とファジャーニ監督。フェリペのブロックでブレイクポイントを奪うなど、一時は1点差まで詰め寄った。
 しかし、終盤は苦しい展開。クビアクに巧妙なスパイクを決められると、スタンドがどよめいた。宮浦のスパイクで一矢報いたが、21−25でこのセットを落とした。

 1セットビハインドでも、ジェイテクトSTINGSに下を向く者はいない。反撃は第2セットからはじまった。立ち上がりはフェリペ、村山のスパイクで得点を重ねた。フェリペのブロックでサイドアウト。さらにフェリペが2本連続でサービスエースを決めてペースをつかむ。宮浦も強烈なスパイクを立て続けに決めて、先に8点目を奪った。
 中盤以降も落ち着いた試合運びを見せた。藤中がネット際で強さを見せ、フェリペが高い打点からスパイクを放つ。久保山の好レシーブから宮浦が決めてブレイクを奪い、村山が相手のスパイクをシャットアウト。乱れたトスを宮浦が決め、サーブでプレッシャーをかけて相手からミスを誘った。16−11とジェイテクトSTINGSが先行した。
 後半も集中力は途切れなかった。先週はほとんど当たりがなかった福山も、ここぞという場面でクイックを決めた。久保山、藤中のサービスエースで勢いをつかんだ。これで20−13。宮浦がふわりとしたボールを相手コートにポトリ。ワンポイントブロッカーの陳を投入すると、村山が決めてセットポイント。最後はフェリペが強打をたたき込み、25−19でこのセットを取り返した。

 続く第3セットはジェイテクトSTINGSが圧倒した。高い決定率を見せたのがフェリペだ。硬軟織り交ぜたスパイクで確実に得点を重ねていく。相手のコートがよく見えていた。コートの中で久保山とよくコミュニケーションを取っていた。フェリペがバックセンターからコートの奥に打ち込んで7点目。福山のブロックで8−5とリードを広げた。
 ホームの後押しを受けて、ジェイテクトSTINGSがさらに走る。藤中のスパイク、福山のブロックでサイドアウト。さらにフェリペがスパイクを決め、久保山が1枚で相手を止める。宮浦のサービスエースで3連続得点。13−9とこのセットの主導権を握った。
 後半も会心の試合運びを見せる。フェリペが正確なパスを久保山に返し、村山がクイックをたたき込む。村山がフェンスにぶつかりながらボールを返すなど、気迫がこもったプレーを見せた。
 藤中のブロックを皮切りに、2回目のテクニカルタイムアウトを挟んで4連続得点。宮浦、藤中のスパイクに加えて、福山のクイックでラリーを制した。ブロックで確実にワンタッチを取り、本間もファインプレーを見せた。パナソニックはこの間に2回目のタイムアウトも消化した。
 終盤も確実にサイドアウトを切った。フェリペの決定率も上がった。藤中のブロックで25−17。セットカウントを2−1とし、先に王手をかけた。

 しかし、第4セットはパナソニックに奪われた。途中、5点のリードを奪うなど、チャンスはあった。フェリペ、宮浦を軸にした攻撃も安定していたし、サイドアウトも取れていた。ジュースの末に落としたものの、主導権を握っていたのはジェイテクトSTINGSのほうだった。
 第5セットの序盤は宮浦のスパイクが立て続けに止められた。チームを救ったのはフェリペだ。高い打点からスパイクを決めると、好レシーブで藤中の得点につなげる。強烈なスパイクをたたき込み3連続得点を奪った。
 ここでパナソニックは1回目のタイムアウト。なおもジェイテクトSTINGSは攻撃の手を緩めない。宮浦が強烈なスパイクをストレートに決めて7−5。久保山のサーブで相手を崩し、9−5とリードを広げた。
 完全にゲームの流れをつかんだ。藤中がスパイクを決めると、クビアクのスパイクを粘り強くつないで宮浦が得点。さらに宮浦が1枚でシャットアウト、12−6と勢いをつけた。福山のサービスエースでついにマッチポイント。宮浦のスパイクで15−8とし、接戦を締めくくった。

 復調の兆しを見せる会心の勝利だ。タフなゲームをしっかりと勝ち切った。
「この1週間、全員がハードワークして、よく戻すことができた。今日の勝利でさらに成長できたところもあり、いい勝利になりました」
 試合後に笑顔で話した本間。ここからジェイテクトSTINGSの反撃がさらに加速する。

フェデリコ・ ファジャーニ監督

先週に比べて、選手たちは素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。諦めない精神を見せてくれて、とてもうれしく思います。まずはサーブで崩し、相手にBパス以下の状況を作ることができました。相手のハイボールにも、安定したブロックとディグでうまく対応できていたと思います。最も大事なサイドアウトもしっかり切れていた。そういう意味でも安定感がありました。先週の練習がはじまるときに、選手たちには「一戦一戦を決勝戦のように戦うこと」と伝えました。どんな相手にも勝てるという強いメンタルを持ってプレーしてほしい。メンタルは筋肉と同様、鍛えれば鍛えるほど強くなるというのが私の考えです。

フェリペ・フォンテレス

先週は2敗してしまいましたが、しっかりと立て直して、今日はいいプレーができました。勝てて本当にうれしいです。個人的に大切にしていることは、コンディションを整えること。体力的にも5セットはプレーできます。ただし、改善しないといけないのは、チームとコミュニケーションを取ることです。試合が終わってから本間選手にも話したのですが、一つ一つのボールに対して100パーセントのエネルギーでプレーしないといけません。レセプションに関しては、セッターにいい状態でトスを上げさせることを意識しています。例えば、前衛のアウトサイドヒッターをアタックに専念させて、リベロが広範囲でレセプションすることもある。そういうところが、サイドアウトが切れている理由だと思います。

■福山汰一

フルセットでしっかり勝てたことはよかったと思います。どのセットもサイドアウトがしっかり切れていました。ジャンプサーブでブレイクする場面も多く、とてもいい試合だったと思います。日本代表の合宿から帰ってきて、クイックの入りを早くしようとスピードを上げた練習に取り組んできました。ただし、あまりにもヒットの数が少ないということで、セッターの久保山さんとも直接話をさせていただきました。まだ1週間しか練習できていませんが、少しゆっくりにしてヒットの数を多くする形に変えた結果、今日の数字は先週よりもよかったと思います。これからタイミングを詰めていけば、まだまだ数字は上げられると思います。

スポーツライター 岩本勝暁のココ!

勝因はサイドアウト。安定した守備で試合を優位に進めた

ファジャーニ監督はサイドアウトを勝因の一つにあげた。特にこの日のジェイテクトSTINGSは守備が安定していた。それによって、セッターの久保山を軸に、多彩な攻撃を展開していた。チームのサーブレシーブ成功率は、パナソニックの「56.0パーセント」に対してジェイテクトSTINGSの「61.6パーセント」。リベロの本間は個人で「72.7パーセント」の数字を残している。サーブがいいパナソニックが相手だと考えれば、高い数字と言えるだろう。サイドアウトで優位に立つために、どんなことを意識しているか。本間はこう言った。「リベロなので、まずはレセプションの中心になること。サイドアウトにおいてレセプションは大事な要素なので、そこをコントロールすることを心がけています。自分のパスだけでなく、フェリペ選手や藤中選手とどう連携するか。ジェイテクトSTINGSはもともとレセプションの成功率が高いチームです。もっとコミュニケーションを取りながら、返せるボールはしっかり返すようにしたい。例えラリーになっても、トランジションからの攻撃で得点を決めるなど、キャプテンとしてもリベロとしても、トータルでサイドアウトが取れるチームを目指していきたいと思います」。明日のパナソニックはさらにギアを上げてくるだろう。だが、守備が安定していれば大崩れすることはない。

【スポーツライター 岩本勝暁】

1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。

詳細
対戦カード ジェイテクトSTINGS VS パナソニックパンサーズ
第1セット 21 - 25
第2セット 25 - 19
第3セット 25 - 17
第4セット 25 - 27
第5セット 15 - 8
日付 2021年11月6日(土)
試合 2021-22 V.LEAGUE DIVISION1 MEN 第7戦
場所 ウィングアリーナ刈谷
メンバー 藤中、福山、フェリペ、村山、宮浦、久保山 L本間
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