

立ち上がりの連続失点が響いて第1セットを失セット。流れを取り戻せず、ストレートで敗れる

勝ったほうがファイナル3に進出する。実にシンプルだ。ファイナル6の最終戦。3位のパナソニックパンサーズとの勝ち点差は、わずかに「1」しかない。今日の直接対決に、今シーズンのすべてが凝縮されていた。
第1セットはパナソニックにペースを握られた。ジェイテクトSTINGSは懸命にボールを追うが、なかなか得点に結びつけることができない。気持ちが空回りした。コートの中の声も消えていた。古田のスパイクが止められて0−4。ここでジェイテクトSTINGSは早くも1回目のタイムアウトを要求した。
しかし、その後もパナソニックの一方的な展開だった。サーブレシーブが崩れたジェイテクトSTINGSは、センター線が機能しない。相手に直接返ったボールをダイレクトで決められて、1−9と大きく点差が広がった。
ようやくエンジンがかかってきたのは、第1セットも中盤に入ってからだ。金丸のサービスエースでブレイクポイントを奪った。浅野が決めてサイドアウトを切ると、古田が相手のスパイクをシャットアウト。カジースキのスパイクでラリーを制して反撃に出た。
さらにオポジットを古田から若山にスイッチ。徐々にコートの雰囲気は変わっていく。しかし、序盤に許したリードはあまりに大きく、18−25でこのセットを失った。
気持ちを切り替えて臨んだ第2セットは、カジースキ、浅野、若山のサイド陣にトスを集めて得点を重ねた。しかし、3連続失点を2度くり返し、6−12と劣勢を強いられる。我慢の展開が続いた。若山のサービスエースなどで、流れはつかみかけた。ピンチサーバーの高橋(和)が攻めて、辰巳のブロックをお膳立て。さらにサービスエースを決めて、一時は13−15と2点まで迫った。
しかし、この日のジェイテクトSTINGSはここで流れがつかめない。カジースキ、浅野のスパイクが止められて3連続失点。サーブレシーブの失敗も響いて、パナソニックに試合の主導権を握られる。反撃のチャンスを失い、17−25の大差で第2セットも落とした。
あとがなくなったジェイテクトSTINGSは第3セット、カジースキ、若山のスパイクで2点を先制した。逆転を許しても、粘ってつないだボールをカジースキが得点につなげた。浅野もブロックを決めて、すぐにビハインドを取り戻した。
その後は互いに1点ずつ取り合い、ジェイテクトSTINGSはこの試合で初めて1回目のテクニカルタイムアウトを奪う。カジースキも気迫あふれるスパイクをたたき込んだ。全員が粘り強いプレーを見せて僅差をキープ。しかし、セット中盤は、パナソニックの速い攻撃に翻弄された。金丸のブロック、カジースキのスパイクで点差を縮めるが、試合巧者のパナソニックは崩れない。16−19と点差が開いたところで、2回目のタイムアウトを要求した。
スタンドの大声援がチームの背中を押した。選手は全力の限りを尽くした。浅野のスパイクで一矢報いるが、反撃もここまで。20−25で敗れ、今シーズンのV・プレミアリーグを4位で終えた。
昨シーズンより一つ順位を上げたが、試合後の選手たちに笑顔はなかった。カジースキは記者会見でこう振り返った。
「試合には勝てなかったが、チームにとってはいい経験になった。ふだんはできるプレーができなかったことが、今日のポイントだ。この経験が次につながればいいと思う」
明るい材料もある。増成監督が言う。
「今日は負けたが、レギュラーラウンドを含めて粘りのあるバレーができた。昨シーズンに比べて、3−1や3−0で勝てる力もついてきた。3レグ以降は練習してきたブロックも出ていたので、少しは成果も見られたと思う。昨日の堺戦に勝ってファイナル3に行けるチャンスをものにしたのは、選手たちの成長の証だと思います」
この悔しさは、次の黒鷲旗へ――。ファイナル6を含め26試合で培った経験は、これからの戦いに生かさなければならない。

勝てばファイナル3に進めるという大事な試合に勝てなかったことは残念です。ただ、選手たちはよくやってくれた。シーズンを通して選手たちには本当に感謝しているし、ジェイテクトSTINGSのバレーを見せることもできたと思います。もちろん、その反面、まだまだ強化しなければいけないことはある。自分たちのバレーをもう一度見つめ直し、優勝を目指せるチームをつくっていきたいと思います。シーズンを通して応援してくださったファンの皆さま、そして会社の皆さま、本当にありがとうございました。

完敗のひと言です。自分たちの力をまったく出し切れなかったし、雰囲気にのまれてしまいました。それに対して、パナソニックさんは自分たちのバレーをしっかり展開して、非常に強かった。経験の差が顕著に表れた試合だったと思います。シーズンがはじまる前は、ファイナル3や優勝と言っていましたが、それが達成できず、応援してくださった方には申し訳ない気持ちでいっぱいです。同じ敗戦をくり返さないように、また練習して、再びこの場に戻ってきたいと思います。応援ありがとうございました。

勝ちたい気持ちが空回りして、自分たちのプレーができませんでした。昨日と同じようにコートの中で声は出ていましたが、単調な言葉しかなくお互いに声をかけ合うことができなかった。プレッシャーに負けてミスをしたり、それによってプレーが縮こまるなど、負の連鎖に陥っていた。チームとして、そういう雰囲気はなくさなければいけません。ただし、これも経験。次にやるときはどんな状況でも自分たちのバレーができるように頑張ります。たくさんの応援、本当にありがとうございました。
スポーツライター 岩本勝暁のココ!
ファイナル6の4敗は、すべて第1セットを失セット。この経験は、次に生かさなければいけない

ファイナル6の5試合のうち、第1セットを落とした4試合はすべて負けた。フルセットに持ち込んだのはJT戦のみで、豊田合成、東レ、パナソニックの上位3チームには完敗だった。確かに、プレッシャーで足が動かなかったこともあるだろう。勝ち急いだり、気持ちが空回りすることもあったかもしれない。しかし、相手がファイナル6に合わせてギアを上げてきたのに対して、スタートから受け身に回ってしまった。「スパイクにしてもサーブレシーブにしても、いつも通りやれば決まる、あるいは返るボールがまったく丁寧にできていなかった。ものすごくプレッシャーがかかる中で自分たちのプレーができなかったことが、相手との差だったと思います」。試合後にこう振り返った浅野。実力差は他のチームと比べてもけっして大きくなかった。ファイナル3の先にも進むチャンスは十分にあった。この経験は黒鷲旗へ、そして来シーズンへ生かさなければいけない。
1972年生まれ。大阪府出身。2002年にフリーランスのスポーツライターとなり、主にバレーボール、ビーチバレーボール、サッカー、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ五輪から2012年ロンドン五輪まで3大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。
詳細
対戦カード | ジェイテクトSTINGS VS パナソニックパンサーズ |
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第1セット | 18 - 25 |
第2セット | 17 - 25 |
第3セット | 20 - 25 |
第4セット | |
第5セット |
日付 | 2016年2月28日(日) |
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試合 | ファイナル6 第5戦 |
場所 | 大阪市中央体育館 |
メンバー | カジースキ、金丸、古田、高橋(慎)、辰巳、浅野 L本間 |
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